ロンドン消息 2021

ロンドンで1年間暮らします

レディーミール

4月29日(木)、雨は上がって太陽が出たが、寒い。ダウンコートを着て丁度良い気候である。色々なスーパーマーケットに行ってみた。

 

ロンドンのスーパーマーケットは、電子レンジやオーブンで温めるだけで食べられる「レディーミール」(ready meal)が充実している。パックに入って並んでいるが、種類が多すぎて中身がよく分からない。何度か観察しているうちに、仮設的に分類をしてみるようになった。

 

まずは、イタリアン。パックの中身は、パスタのバリエーションやラザニアである。マッカン・チーズ(チーズ・マッカロニ)という、マカロニをチーズで合えただけという料理もあるが、マッカン・チーズはアメリカ合衆国で定番の料理でもあるので、グローバル化したイタリアンである。パック入り以外にも、オーブンで焼くだけのピザや、生パスタや生ラビオリと、それにかけるトマトソースの類も充実している。ロンドンでもイタリアンは定番のようである。そして、価格もお手頃である。

 

次にカレー。インド風である。これも種類が多く、長粒種のご飯が入っているパックとご飯なしのパックがある。チキン、海老、魚など、色々な具材とスパイスの組み合わせがあり、奥が深い。

 

そして、インド以外のアジア料理。春巻きやシューマイ、小籠包などの中国料理やパッタイなどのタイ料理もある。ただし、日本料理は海苔巻きやお寿司が主で、パックに入りのコーナーにはなく、他の目立つ場所に置かれている。そして、1パックが少量で、値段が高い。スーパーマーケットで買える日本料理は、お腹を一杯にするためというより、嗜好品の部類に入るだろう。

 

最後に、英国の伝統料理がある。フィッシュ&チップスやパイ(パイ皮に具が包まれているものや、マッシュポテトがパイ皮の代わりになっているものなど多数)のほかに、色々な種類があるようだが、まだまだ網羅できない。「ステーキ&キドニー入りヨークシャープディング」のパックが目に入ったので買ってみた。「ステーキ&キドニー」は「牛のモモ肉と羊の腎臓の煮込み」で、ヨークシャープディングは肉料理の付け合わせのパイ皮に似たものである。ビーフシチューが入ったパイのような食べ物だった。

 

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ステーキ&キドニーのヨークシャープディング

 

シラー・カンパニュラータ

4月28日(水)、曇りから雨。さらさらした雨が降ったりやんだり、時に強くなったりする。傘をささずに歩ける降り方である。日が出ないので体感温度も低い。暗い空の一日である。

 

灼熱の太陽の場所ではシャドウ(影)が際立つが、ロンドンの光はシェイド(日陰)を作る。

シェイドを大切にしているためか、ロンドンでは、街路樹の下のちょっとした日陰の場所でもシェードガーデンになって植物が茂っている。4月の初頭に至る所に咲いていた黄色いラッパスイセンはシェイドで咲く花だった。春先の弱い日差しと日陰の中で、ラッパスイセンの黄金色が光を放っていた。ラッパスイセンの花の季節も終わり、今、あちこちの日陰に咲いているのがシラー・カンパニュラータである。ヒヤシンスに似ているが、花が少なくて釣り鐘型に下がっている。時々、白い花も見かけるものの、圧倒的に青い花が多い。バス停の横にも、軒先の庭にも至る所に植えられている。

 

英国の春の名所として、森林の中で一面に咲くブルーベルの花の景色があるという。英国では森は貴重な特別な場所なので、ブルーベルの花もめったに見ることができない。シラー・カンパニュラータの青い花は、森の木陰のブルーベルを思わせる花のようである。

 

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シラー・カンパニュラータ

 

リージェンツ・パークからベーカー街へ

4月27日、火曜日。快晴で、最高気温が15度になるという。明日から天気が下り坂という予報なので、散歩の距離を延ばすことにした。まずは、プリムローズ・ヒルの向こうに広がる広大なリージェンツ・パークの敷地を横断した。道の途中で、コマドリを何度も目撃することができた。公園にはバードフィーダーが設置されている場所もあり、野鳥の声が響き渡っている。

 

リージェンツ・パーク内にあるロンドン動物園の横を通り過ぎて進んでいくと「Queen Mary's Gardens」というローズガーデンに着く。ガーデンの入り口は、セイヨウミザクラとおぼしき桜が満開だった。

 

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Queen Mary's Gardens の門

ローズガーデンのバラは、まだ新芽が伸びている程度だった。バラが見ごろになるのは6月初旬らしい。ローズガーデンの近くに、「Japan Garden Island」という日本式庭園があった。小川の上に藤の蔓がからまった太鼓橋がかかっていて、橋の向こうに小さな島には灯篭が置かれている。小さな島は、風景を楽しむ人やスケッチをする人で賑わっていた。

 

リージェント・パークを抜けると、ベーカー・ストリートに出た。シャーロック・ホームズの舞台である。地下鉄のベーカー・ストリート駅の方に進むと、駅前にホームズの彫像が立っていた。台座に「Great Detective」と記されている。観光客の姿は全くない。ベーカー街221Bに行ってみると、そこはシャーロック・ホームズ博物館となっている。博物館は現在閉館中。周囲にはお土産屋さんが店を開いていて、ビートルズストーンズのグッズも並んでいた。しかし、店を見る人は誰もいなかった。

 

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イカー街に立つホームズ

再び、リージェント・パークに戻る。リージェント・パークの池にはカナダガンに混じってマガンの姿があった。人間に驚くことなく、池のほとりで草を食べていた。

 

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リージェント・パークのマガン

 

スティルトンチーズ

4月26日、月曜日、晴れ。スーパーマーケットにてスティルトンチーズを買う。ロンドンは、東京に比べてバターとチーズの値段が安い。そして、たとえスーパーマーケットで買うにしても、チーズの種類が多い。ハーブ入りのオリーブオイル漬けフェタチーズが2.6ポンドである。サラダの具材として三回位に分けて使うと丁度良く、使い勝手が良い。

 

フェタチーズはフレッシュで癖のないチーズなので、そろそろ冒険しようと思い、英国を代表するチーズであるスティルトンチーズに進む。スティルトンチーズは熟成された青カビのチーズである。しかし、日本では青カビチーズを食べる機会がほとんどなかったため、少々不安である。スーパーマーケットには色々なスティルトンチーズが売られていているが、初心者として、あまり発酵が進んでいなさそうなものを選んだ。生で食べるのではなく、まずは茹でたカリフラワーの上にスライスしたチーズをのせて、オーブンで焼いてみたところ、深い味わいのソースになった。第一関門は終了。次に、切りたてをそのまま食べてみる。塩味の強い、深い味わい。スティルトンチーズは、発酵食品らしいうま味のある食べ物であった。

 

体感気温とサイズ問題

4月25日、日曜日。晴天だが、冷たい風が吹いていて寒い。この所、最高気温が10度から13度程度、朝晩は5度以下の日が続く。日なたは暖かく春を感じるが日陰は冷える。東京だと10月位の気温だろうか。しかしなにより気候の違いは湿度である。東京に比べて、とにかく乾燥している。そのため、気温が上がっても体感的にはサラサラして不快指数は低く、じっとりと汗をかくことがない。その一方、寒いと冷える。一日の体感温度の振れ幅が大きいため、服装は人によりけりである。外では、タンクトップ姿の人もいればダウンコートを着ている人もいる。

 

冷え対応のため、近所のスーパー「Sainsbury's」で衣類を探してみる。この辺りのスーパーの中では「Sainsbury's」は大型店舗で、日用雑貨や衣類も並んでいる。雰囲気が「西友」に似ているが、よく見るとシャンプーやせっけん、日用雑貨はニュージーランド製のものが多くて日本では見かけないものがある。衣類のコーナーには、靴下やタイツなどがあった。さらに探すとスパッツを発見。冷え対策のために良いと思ったが、問題はサイズである。「8」「10」「12」と続き、「26」まであった。他の衣類のサイズも「8」から始まっている。検討の結果、「8」を購入。

 

 コートより軽めジャケットがあると外に出るときに便利だと思い、ネットで調べてみた。ロンドンは長らく続いたロックダウンが緩和され、洋品店は店内での営業がやっと許可されたので、「welcome back sale」をやっている店がかなりある。

 

「HOBBS」のサイトのセールが充実していた。サイズは、「6」「8」「10」と続く。「XS」「S」「M」に対応している模様である。「HOBBS」の店舗は、現在のところ日本では銀座三越にしか入っていないようで「英国王室御用達」と謳われているが、ロンドンではそこそこカジュアルな価格設定である。キャサリン妃風ワンピースが洗濯機で洗えるというのも実用性を感じる。セール価格なので、しばしサイトに見入る。サイズは、「8」か「10」か。サイトでは、175センチのモデルさんが「8」を着ている。サイズ「8」が、日本の9号サイズに相当すると判断した。「HOBBS」の実店舗がハムステッドにあるので、今度行ってみたい。

 

ノッティング・ヒルのマーケット

4月24日、土曜日。暖かい晴天。土曜日はロンドン各地で市場が立つ。お天気が良かったので、ノッティンング・ヒルまで出かけた。映画『ノッティング・ヒルの恋人』のロケ地である。最近では『ノッティング・ヒルの洋菓子店』という映画が公開されている。ノッティング・ヒルは高級住宅地と謳われているが、映画では、書店や洋菓子店など個人営業の店舗が舞台となっている。お店が多いのであろう。

 

そのノッティング・ヒルでは、土曜日に骨董市が立つという。地下鉄のセントラルラインに乗ってノッティング・ヒル・ゲート駅に向かう。セントラルラインには一大ショッピング街のオックスフォード・サーカス駅やボンド・ストリート駅があるため、ノーザンラインに比べて混んでいた。ノッティング・ヒルはショッピング街のお隣のケンジントン公園の向こう側に位置しており、都心である。

 

駅から大通りを渡って、市場が立っているというポートベロー通りに向かう。通りにはシックに色分けされたテラスドハウスが並ぶ。

 

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ノッティング・ヒルのテラスドハウス

 住宅街を抜けると、小さな通りの向こうにマーケットが見えた。ポートベロー通りが歩行者天国になっていて、道にマーケットが並んでいる。通りの両側には店舗が並んでいて、銀を扱う店や陶磁器を扱う店など骨董関係の店が目立つ。店舗も道に向かって店を張り出して商品を並べている。銀食器や銀や天然石のアクセサリー、ティーカップが並べられていた。ドールハウス用の食器や小物を売る店もあった。市場では銀や陶磁器の店に加えて、中古カメラを売る店、昔の装丁の本を売る店、ボードゲーム用の人形を売る店、カードを売る店などが並んでいる。なんとなく浅草の仲見世を思わせる雰囲気である。眺めるのは楽しい。

 

ゴブラン織りの店が気になった。色々な柄の織物がクッションカバーになっている。英会話が上達した暁には、店主さんから織物についてお話を聞きたい。

 

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市場に立つゴブラン織りの店

 

ハムステッド・ヒースの林

4月23日、金曜日。春の気候が続いているのでハムステッド・ヒースまで散歩する。ハムステッド・ヒースは広大な敷地の公園であるが、「ヒース」は見当たらず、小高い丘がある。丘に向かってなだらかな草地が続いており、所々に「森」の気分が楽しめるちょっとした林がある。

 

英国では「森」は特別な場所である。ロブン・フッドはシャーウッドの森に住み、『くまのプーさん』のプーたちが住む森には、大人になったクリストファー・ロビンは戻ることができない。森は、古代につながりながらも、その後ほとんどが伐採されてしまったため、幻想の領域となった。

 

ハムステッド・ヒースの林には巨木が茂っている。林の中に巨大なオブジェのように朽ち果てた倒木があった。その木の枝の間から小さなコマドリの赤い胸が見えた。ハムステッド・ヒースで初めて見たコマドリだった。

 

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倒木から樹木の大きさが分かる