ロンドン消息 2021

ロンドンで1年間暮らします

Test to release

4月5日の月曜日。英国ではイースターの祝日が続いている。日曜日がキリスト復活の日ということで、イースター休暇中の日曜日は大切な日となる。4日にはスーパーマーケットが閉まったが、5日は通常営業に戻った。5日は朝から天候が激変して気温が下がり、北風に交じって雪の結晶が飛んできた。BBCニュースの天気予報の「shower」という言葉に納得する。きめ細かい結晶のシャワーがさらさらと吹き付けてくる。体感温度は低いが、日差しは暖かい。ウールのロングコートを着てストールをぐるぐる巻きにして部屋を出た。 

 

今日は「Test to release」、つまり「自己隔離からの解放のための検査」の日である。英国政府は海外からの入国者に10日間の自己隔離を義務付けているが、追加料金を支払うと5日目に追加のPCR検査を受けられ、結果が陰性となれば自己隔離は終了となる。5日目のPCR検査を受けるためには、出国前にオンラインでNHSに登録されているクリニックを選んで予約しなければならない。 

 

そのクリニックは、オックスフォード・サーカスの大通りから少し入った場所にあった。オックスフォード・サーカスは一大ショッピングエリアで、大通りにはadidaszaraなどの大型店舗が並んでいる。ユニクロもあった。そして、すべての店舗が閉まっていた。その中で、一軒だけキッチュなロンドン土産の店が開いているのを見つける。ショッキングピンクの店内の入口にはカラフルなキャンディーが並ぶ。食料品を取り扱っているために店を開けることが許可されたのだろう。しかし、ロックダウンの今、ユニオンジャックがプリントされた雑貨を買いに来る客がいるのだろうか。 

 

大通りから横道に入って進むとオフィス街になっている。オフィス街の建物はビルではなく、石とレンガで造られた重厚感のあるテラスハウスである。道沿いのテラスハウスのすべてが同じ高さで、並んだ屋根の上に青空が見える。その中の一軒がクリニックだった。扉の横に並ぶブザーの一つを押すと、すぐに受付の担当者が現れた。名前を言って予約を確認すると、廊下の先の診察室に案内してもらえた。待つことなくドクターが出てきたので「Test to release」に来たと説明。すると「ワクチンはもう打った?」と聞かれた。ワクチン接種が大急ぎで進んでいる英国ならではの質問である。 

 

コートを脱ぐ間もなくPCR検査は終わった。細い綿棒で喉の奥の両方の扁桃腺をぬぐい、その綿棒を鼻の穴の奥に入れて回して終了。英国式は、喉に入れた綿棒をそのまま鼻に入れるというやり方である。結果は当日の夜にメールで通知されるという。 

 

帰り道にロンドン土産の店の前を通ると、高校生位の女子三人組が店頭に並んだ商品を眺めていた。祝日だったので皆で遊びに来たのだろうか。その日の夕方、BBCボリス・ジョンソン首相が予定通りに4月12日よりロックダウンを緩和すると発表したというニュースが流れていた。「不要不急」ではない店舗も開くことになるらしい。来週は、彼女たちも心ゆくまでショッピングを楽しめるようになるだろう。 

 

21時30分に、クリニックからメールが届いた。添付されたPDFファイルは「自己隔離終了」の証明書だった。

 

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イースターの食べ物、ホットクロスバン。十字架の模様が特徴的。