ロンドン消息 2021

ロンドンで1年間暮らします

ハムステッド・ヒース

4月8日。午前中、自分でPCR検査2回目を実施。ポストに入れに行くために外に出ると小雪が舞っていた。昼を過ぎると日差しが出たので、ハムステッド・ヒースに散歩を兼ねてバードウォッチングに出かける。

 

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レンガ造りの建物が並ぶハムステッドの住宅街。

 

ハムステッドはロンドンの北側にある住宅地である。レンガ造りの住宅が立ち並ぶ道を進んで行くとハムステッド・ヒース駅に到着する。駅の横に野菜や花を売っている売店がある。駅の奥はハムステッド・ヒースである。池や丘のある広大な敷地の公園で、ロンドンで最も標高の高い場所の一つになっていて、パーラメントヒルと呼ばれる丘からはロンドン市内が一望できる。公園の入り口の小路を進むと、道の両側は高い木が生い茂る林である。鳥のさえずりが響く。木を見上げていると、鮮やかな緑色の中型の鳥を見かける。ワカケホンセイインコだった。ワカケホンセイインコは東京でも野鳥として繁殖していて、以前、上野公園の桜並木で花をむしり取っているのを目撃したことがあるが、ロンドンでも増えている様子である。トロピカルな色彩の鳥なので見つけやすい。

 

桜の花が咲いている木の近くに行くと、鳥のさえずりがますますはっきりとしてくる。しばらく枝を眺めて続けると、小鳥を見つけた。桜の花の蜜を食べている様子である。日本のシジュウカラに似ているが、さらに小さい。にもかかわらず、よく通る美しい高い声でさえずっている。「tit」(カラ類)である。ブルーグレーの羽に黄色い胸。頭が黒いのが「Great tit」、グレーの頭が「Blue tit」。姿が小さいので見つけにくいが、いたるところでさえずっていて、林の中を音がさざめきのように響き途切れることがない。

 

平地の芝生が現れた。草の上を白と黒の羽の「magpie」が歩いている。烏より少々スマートな鳥で、カケスの仲間である。低い木の枝から薄茶色のカケスが飛んできた。羽に入ったブルーの差し色が目立っている。

 

バードサンクチュアリの池は水鳥を保護するためか奥まで見通すのが難しかったが、その隣には周囲をぐるっと一周できる大きな池があった。池にはマガモキンクロハジロといたカモ類、ウやカイツブリ、大バンやバンなどの水鳥、そして、白鳥もいた。池の奥には小さな島があって、ガンが上陸しているのを見つけた。エジプトガンもやって来るらしい。

 

公園には、鳥だけではなく、もちろん人間もいる。芝生の上でピクニックをする人、ジョギングをする人、遊んでいる子どもたち。皆、幸せなひと時を過ごしている。そして、その中で、見たところ最も幸せそうなのが犬なのだった。飼い主と一緒に公園にやって来た犬は、小型犬からレトリバーのような大型犬まで、リードから解放されて、尾を勢いよく振りながら自由に公園の中を歩いたり走ったりしていた。かといって勝手に振る舞うことはなく、飼い主の目の届く範囲の中にいる。見知らぬ人にすれ違っても目を合わせることはせず、元気に遊びながらも慎み深い態度を崩さない。喜びに満ち溢れながらも礼儀正しい犬たちである。

 

ハムステッド・ヒースは鳥たちのサンクチュアリであるだけでなく、そこを訪れる者に自由と解放をもたらす場所だった。

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ハムステッド・ヒースは柳の新緑が美しい季節だった