ロンドン消息 2021

ロンドンで1年間暮らします

フィンチリー・ロード駅近くで買い物

4月9日金曜日。週末に雨が降るという予報なので、その前に大きなスーパーに行ってみることにした。調味料を手に入れたい。

 

近所のスーパーで野菜や肉・魚などの生鮮食品は手に入るが、問題は味付けである。塩コショウ、ハーブ、オリーブオイルとビネガー以外の何かが欲しい。焼肉のタレがあるわけもない。英国料理の味付けには何があるのだろうか。

 

フィンチリーロード駅近くには、「Sainsbury’s」と「Waitrose」という大きなスーパーマーケットが二件ある。「Waitrose」はウェブサイトも充実していてレシピ情報がアップされている。ラムのローストのレシピを見つけた。ヨーグルトに塩とトマトピューレーと「ras el hanout」を入れて混ぜたタレを作り、肉を漬け込むという。「Waitrose」に「ras el hanout」を買いにいくことにする。

 

「Waitrose」はバス停の前にあった。入口のドアを開けると、高級感のある店内が広がる。目立つ場所に日本関係のコーナーがあった。調味料やお寿司などの日本食のパックが並べられている。店内を進むと肉と魚売り場がある。陳列されたものをその場で必要なだけ注文できるコーナーもあった。魚売り場には長い列ができているが、肉の方は誰もいない。陳列棚には迫力ある大きな肉の塊が並ぶ。表面がカビでコーティングされた熟成肉の塊がつるされた熟成庫もある。

 

スパイスの棚に行く。カレー粉やマサラの種類が充実している。「ras el hanout」を見つけた。一緒に「punjab masala」もカゴに入れる。英国の家庭で日常的に使われているという「HP Brown Sauce」のボトルを見つけたので、一緒に購入。コンソメキューブも見る。チキンやビーフコンソメキューブの横に「Umami」という名前の野菜コンソメを発見。「Umami」を買ってみる。

 

隣の「Sainsbury’s」に移る。駐車場に隣接した巨大スーパーである。広くて棚が見やすい。こちらの方は「Waitrose」よりも庶民的な価格設定らしい。トマトケチャップを見ると2種類あった。値段が三倍も違ったので、どちらにするか悩んだ。プライベートブランドの方はかなり安い。あまりに安いので不安になり、結局、もう一方を選ぶ。近くに瓶詰のハリッサがあったので、一緒に購入。

 

「ras el hanout」とハリッサは北アフリカの調味料である。イギリスのスーパーでは、インドや北アフリカのスパイスが並んでいた。アメリカ合衆国クレオール料理に使うケイジャンのスパイスもある。複雑な世界の歴史を感じる。

 

帰りに「natural natural」に立ち寄る。ロンドン在住の日本人に「なちゅなちゅ」と呼ばれて親しまれているという日本食材の小売店である。扉の前によく見知っている白菜やみかんが並ぶ。扉を開けて「Hello」と店内に入ると「いらっしゃいませ」と挨拶された。店内は日本だった。醤油とめんつゆのボトルに、みりんも購入。これさえあれば、である。

 

帰って来るとお昼だった。目玉焼きを作り、さっそく「HP Brown Sauce」をかけてみる。まったりとしてひろがる、ぼんやりとした味。ブルドックソースのガツンとスパイシーな味の凝縮度に比べると、味に中心がない滑らかなブラウンソースである。しかし、日本のソースとの繋がりもほのかに感じられる。日本のソースの原点なのであった。