ロンドン消息 2021

ロンドンで1年間暮らします

カムデン・タウンふたたび

4月12日月曜日。今日はロックダウンが緩和される日である。「不要不急」の小売店が開き、パブやレストランは屋外での営業が可能になる。午前中から、近所の店舗も開いていた。ショーウィンドウに飾られた本を眺めるだけだった書店が開店し、どんどん人が入っていた。カズオ・イシグロの新刊書「Klara and the Sun」が目立つところに置かれている。テイクアウトのみだった食堂も、道に面したスペースにテーブルと椅子を並べていた。

 

朝には小雪が舞う寒さだったが、昼頃には日差しが出て来たので、午後3時過ぎにカムデン・タウンに散歩に出かけた。昨日までシャッターが下ろされていた店舗が開いている。T-シャツやスニーカー、バッジの店に並んで、ゴス・ファッション、インド雑貨、マンガの店がある。カムデン・タウンはロンドンのサブカルチャーの発信地である。日本の原宿に似ている。今日は、若者たちのグループがひしめき合って集まっていた。冬の間ずっと眠っていた街が、今日、覚醒したのだった。

 

水門の所に行ってみると、美しく彩色されたナローボートが停泊していた。舟の中はちょっとしたカフェになっているらしく、乗客の姿も見えた。水門には、中学生くらいの3人と、引率の先生とおぼしき人が立っていた。どうやら、体験学習のようで彼らが水門を開けるらしい。水門は手動で、まず、片方の門を押し開けて水を放流しボートの水位を下げる。充分に水位が下がった所で、力いっぱい反対側の門を空けると、ボートは運河へと出発した。カムデン・タウンがよみがえった日は、水門が開かれた日でもあった。

 

帰りに、カムデンの「Poppie’s fish and chip’s」に寄り、フィッシュアンドチップスをテイクアウトした。魚は「Cod」(タラ)、「Haddock」(コダラ)、「Plaice」(カレイ)の三種類がある。「Plaice」をオーダーした。帰ってから箱を開けてみると、大きなヒラメの姿が出て来た。上品な白身魚フリットだった。