ロンドン消息 2021

ロンドンで1年間暮らします

Jet lagとクロウタドリ

英国時間で3月31日の16:30に空港に到着、一時間後に空港を出て、タクシーで自宅の部屋に到着。部屋は1月から英国に滞在していた夫が借りていたので〈部屋を探して契約する〉というミッションはスキップできた。英国での不動産契約には英国の銀行口座が必要となる。しかし、英国で銀行口座を作るためには英国の住所が必要になる。タマゴが先かニワトリが先かのようなこの無限ループを突破するための方法として、英国に到着したら、すぐにネット銀行の「monzo bank」に申し込んで口座を作り、ホテルなどの滞在先の住所宛てにデビッドカードを送ってもらうというやり方がある。「monzo bank」の口座に日本の銀行口座から送金してもらえば不動産契約が可能になる。この工程は既に完了していたので、空港から部屋へと向かうことができたのだった。

 

タクシーの窓から見えるロンドン市内は春の花盛りの始まりで、桜やモクレンレンギョウなど、街路樹の巨木の花が開き始めていた。晴れた暖かい日で人も多い。バス停に立っている人はマスク姿だったが、道行く人のほとんどがマスクを着けていない。タクシーはドールハウス風のレンガ造りの建物が並ぶ道を進む。

 

部屋に着いたのが18:30時頃。つまり、日本時間の4月1日の午前2時30分だった。日本時間で考えると早朝から深夜まで活動していたことになる。体力的には限界を超えているが、外はまだ明るい。日が暮れてから寝ることにしようと、さらに数時間がんばって21時に就寝。ばったり倒れて意識を失ったものの、24時に覚醒。1時間程度もぞもぞして再び眠るが、4時に覚醒。睡眠状態が3時間続くと突然に目がぱっちりとして覚醒する状態になった。

 

明け方、意識だけが冴えてもんもんとしていると、窓の外から金属のねじを回しているような音が響いた。時間は5時30分。窓の外はまだ暗い。その音は10分位続いた後、メロディーに変わった。鳥のさえずりだった。メロディーは10分位続いて、最後に高らかな旋律となって響き渡り、突然留まった。6時になっていた。クロウタドリだった。夜明け前の30分、クロウタドリは歌い続けたのだった。

 

マザーグース「6ペンスの歌」に登場する「黒ツグミ」(blackbird)はクロウタドリである。パイに詰められて焼かれたのに、パイを開いたら歌い出す鳥、その鳥の声が、夜明け前のロンドンに響くのを聞いた。