ロンドン消息 2021

ロンドンで1年間暮らします

自己隔離 続き

4月1日のお昼過ぎ、携帯電話に着信があったことに気付いた。日本の携帯番号である。その後、再びかかってはこなかった。誰なのか。

 

ところで、英国での携帯電話の契約方法について。出発前に、日本から「giff gaff」という格安携帯会社にメールで申し込みを行うとシムカードが送られてくる。そのシムカードを英国に持っていって携帯電話に差し込むと、すぐに英国の電話番号が使えるようになる。今回、シムカードが二枚入るデュアルシム携帯を準備し、一台で日本と英国の両方の電話番号が使用できるようにした。

 

4月2日のお昼頃、再び携帯電話が鳴った。やはり日本の電話番号である。電話に出てみると名前の確認をしているので返事をする。そこまでは良かったが、すぐに英語の雪崩に飲み込まれた。音はどんどん続いている。途方に暮れて「pardon?」と言ってみる。それを受けて繰り返して話してくれているらしいが、コミュニケーションを立て直すきっかけがつかめない。事態の解決を図るべく「メールで詳細を送ってくれませんか?」と言ってみた。英語で伝えてみたものの、今度は受話器の向こうから「pardon?」という声が。向こうも困惑している。二人で一緒に困っていることだけはよく分かった。しばらくの沈黙の後、聞こえて来た言葉は「通訳を頼めますよ?」だった。なぜか突然理解できた。ぎりぎりでなんとかコミュニケーションが成立。「ぜひお願いします!」と言うと「何語?」と聞かれた。「日本語で!!!」と即依頼。様々な言語に対応する通訳者がスタンバイしている模様。

 

それはNHSからの確認の電話だった。出国前に日本でGOV.UKの「passenger locator form」に登録した電話番号に発信されているのだった。「私は英国政府を代表してあなたに電話をしています」という言葉から始まり、自己隔離を継続していますか?PCR検査の登録は済ませていますか?などなどの注意事項の確認が続いた。「Yes」と「OK」という二種類の言葉で対応できる内容だったが、間に通訳をはさむと15分位時間がかかった。

 

4月3日のお昼に、NHSからのメールで前日提出したPCR検査の結果の通知があり。そのすぐ後に、またNHSから電話がかかってきた。前日の経験により、すぐ日本語の通訳を依頼して話を聞く。「あなたはPCR検査の登録をしましたか?」と昨日と同じ質問を受ける。ずいぶん前に登録して検査も済ませて、今、NHSから検査の結果が届いたばかりではあった。しかし、そのことを知りたいというより伝える内容のマニュアルが決まっているらしかった。

 

電話は、1日、2日、3日、4日と毎日かかってきた。1日目は電話を取れず、4日目は電話口で通訳を依頼したところ、日本語の通訳者が空いていないのでまた後からかけますと言われ、結局その日はそれで終わった。英国にやって来て10日以内の入国者を追跡して所在確認をするという業務のようである。一日一回電話をかけるという仕事が重要なようで、こちらがかかってきた電話を取れなくても、さほど気にはしていない様子である。英語以外の様々な言語話者への対応をあらかじめ想定して通訳が準備されているということに、「帝国」の歴史を感じたのだった。